旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
 この老舗(しにせ)料亭で出してはいけないような間が抜けた声が漏れてしまい、ハッと口を押さえた。


「すみません。お見合いは中止なんですね」
「どうして?」


 どうしてって、相手がいないのではできないでしょう?


「お相手は遅れていらっしゃるんですか?」


 彼はその間のつなぎ?


「見合い相手はここにいるが」


 彼の言葉が呑み込めなくて瞬きを繰り返す。


「とりあえず入れ」


 気がつけば、料理を運んできた仲居さんが困った様子で私たちを見つめている。


「すみません」


 なんだかよくわからない事態に遭遇して戸惑ったものの、ひとまず部屋の中に足を踏み入れた。

 十二畳の和室には床の間があり、立派な掛け軸と生け花が飾られている。

 相馬さんは座卓を挟んで床の間から遠い席に座っていて、彼は私を床の間側の席に促した。


 これ、反対じゃない? 
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