Phobiagift
目を開けるとポロポロと大粒の涙を流している…エルの姿。


服はそのままだがどうやら誰かが体を拭いてくれたらしい。


さっきまで何にモヤモヤしてたのだろうか。


とりあえず、隣の少年を泣き止ませないと。


力の余り入らない腕を精一杯動かしエルの頭を撫でる。


『ごめんなさい〜』


自分は何も悪くないのに謝る姿に私は少しデジャブを感じた。


しかし泣き止ませようとしたのに最初以上に泣かしてしまった。



部屋のドアが開く音がする。


『誰』


私がそう言うといそいそと赤髪の少年、レイ君が近くまで歩いてきた。


『おーアル起きたんだな!』


ベットの横まで来て頭をぐしゃぐしゃに撫でる。


『あの、頭…それよりこの子…』


ぐしゃぐしゃになった頭を整えながらエルを指さす。

『あぁ、お兄さんに任せなさい!』


レイくんは、少し席を外すと可愛いくまの人形を持って帰ってきた。


隣で泣いてるエルをレイくんが宥めている。


(慣れてる…)


その間、私は何があったか寝起きのハッキリとしない頭を確かなものにしていく。


知らない場所で目を覚ましてエルに名前を貰った。

何故かパニックになってこの施設を飛び出したこと…



そこからは糸が絡まってるみたいに思い出すことが出来ない。


エルがどうやら泣き止みそこから眠ってしまったようだ。


レイくんはこっちを見るとニカッと笑いさっきみたいにくしゃくしゃに撫でるのではなく優しく撫でる。

『何か聞きたいって顔してるな』


『…あの、私は逃げ…逃げようとしたあとどういう経路ででまたここに戻ってきたんですか。』


その事か!と言うような顔をするとレイくんは教えてくれた。


『僕はそこまで知らないけど、迷いの森からセイさんに保護されて、1時間くらい理事長室に預けられたんだ。なぜだかは知らないけど。その後セイさんがアルとエルがペアになったって聞いてエルの部屋のあまりのベットに寝かされた訳だね。』


朧気ながらレイのおかげで状況が把握出来た。


『そう言えば体は誰が拭いてくれたの?』


レイくんはハハハッと笑うと顔に泣いたあとが余っているものの油断しきった子供の寝顔をするエルを指さした。


『エルはほんとに健気だよな』


ふふっと笑い流す


自分がエルの寝顔を見て何かと比較したのは隠して。




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