御曹司の恋の行方~地味な派遣秘書はご令嬢~
カウンターに座ったふたり。

店員は、もちろん翔も遥の事も知っているが、敢えて口に出すことはない。

お互い好きな物を頼み乾杯する。

「お疲れ」

「お疲れ様でした」

「はぁ、接待は疲れるな」

「そうですね。気を遣いますね」

「西園さんは、いつも淡々としていて、緊張とかなさそうだよね」

「そんな事はありません。普通に皆さんと一緒です」

「この前の海外営業部の話聞いたよ。西園さんがいたから大事にならずに済んだらしいね」

「いえ、たまたまフランスの訛りが強い方だったので、電話を取った女性も聞き取れなかったのでしょう」

「いやいや、俺もフランス語とドイツ語は話せるが、訛りがキツい人は厳しいな」

「慣れですね」

「海外生活の経験があるの?」

「生活はないですが、親の仕事の都合で定期的に各国を長期滞在する事があったので。副社長はドイツはいかがでしたか?」

「あー、仕事ばかりしていたな。外で食事をする事はあっても、遊びに行った記憶はないな」

「そうですか。何か勿体ないですね」

「今思えば、そうだな。もっと仕事を要領よく熟して余裕のある生活をしたら良かったよ」


< 55 / 154 >

この作品をシェア

pagetop