この先に日常は待っているのか
正門から入ると、昇降口にクラス表が貼ってあり、学年主任の朝倉が立つ。始業式のためか、いつものカラフルなジャージではなく、スーツ姿だった。
先生たちの話によれば、担任はクラスによって変わるが、学年主任は3年間変わらないらしい。
「「おはようございまーす」」
「お前ら1番乗りだぞ。確認して教室で待っとけ。」
そう言われ、5人はクラス表を目で追う。
「私3組だ!」
「え!僕も!哲樹もじゃん!」
「……つーか、俺たち全員3組だろ。」
盛り上がる2人を他所に、大和が言う。
「やったー!!!」
「彩!これで先生に抗議しなくて済むな!」
「それ言ってたの陽翔だけだよ。」
再び哲樹が呆れる。
「嬉しいのは分かるが、早く教室に行ってくれ。お前らがそこにいると人が集まっちまうだろ。」
先生に促され、5人はそそくさと校内に入った。
「修学旅行もあるよね!」
「今年もきっと沖縄かな。」
「シュノーケリングとかやってみてーな!」
階段を登りながら、高校2年生ならではの修学旅行で会話は盛り上がる。
そんな中、不安が彩を襲った。
あれは1年生の時のこと。
部活内の男女比によって同じ部活の男子達と仲が良いこと、加えて学年でも顔面偏差値の高い大和たちとも仲が良いこと。この2点をきっかけに、少しではあるが彩は陰口やあらぬ噂を立てられることが多かったからだ。
先ほどまで明るかった彩の表情もだんだん暗くなっていく。
「おい、彩。今年は俺だけじゃなくてこいつらもいるんだ。何言われても楽しんでやろーぜ。」
表情が暗い彩を見かねた大和が言った。
「そーだよ!楽しもう!」
「だな!彩は俺に昼飯を分けてくれねえとな!」
「こんな奴もいることだし気にすることないよ、彩。」
続けて3人が声をかける。彩は礼を言って微笑むと、皆がいてくれるという安心を感じ、これから始まる高2に期待に胸を膨らませた。