この先に日常は待っているのか
体育館裏にある部室棟に着くと、それぞれ別れて部室に行く。
「じゃあ、また後でな。」
「うん。大和も頑張ってね!」
そう言いながら大和は、彩の頭をわしゃわしゃっと撫でた。
彩は階段を登ってすぐの所にある卓球部と書かれた部室のドアを開ける。
そこには、大井先輩が床に座っていた。
「先輩、こんにちは!今日も早いですね。」
「小田切さん〜、僕、昼はここで食べたんだ。」
大井先輩は、先輩後輩の壁をなくしてくれるほど、気軽に話しかけてくれるし、面白い先輩だ。
去年、部活全員に渡したバレンタインのお返しに、大井先輩は彩へマヨネーズをプレゼントしてきたほどである。
バタバタバタッ
「「こんにちは〜」」
すぐ後にやって来たのは彩と同じ2年の5人だった。
彩の所属する卓球部は、3年が2人、2年が8人、1年が5人で、彩以外は全員男子である。女子がいなかったわけではないが、退部や引退で彩はほとんどの期間は女子1人である。
「お疲れ〜」
大体揃ったところで、体育館に向かう。卓球部は全員で15人もいるのに、活動場所は体育館のギャラリーで卓球台は3台のみ。彩は、先程の2年生5人と一緒に1番奥の台を使っている。
顧問もほぼ来ない部活であるため、彩達は卓球をしつつも、おしゃべりをしながら楽しく過ごしている。勿論、強い選手はしっかり練習しているが。
カコンカコン…
ここで、彩と仲の良い5人の卓球部を紹介しよう。
彩と打ち合いをしているのは、白崎 中〈しろさき あたる〉。二重の目と可愛い雰囲気を持つ彼は、女子とも仲が良い。適当そうに見えて根はしっかりしている。彩は初対面の時に変わっているなと思っていた。
隣で打ち合うのは、神城 優哉〈かみしろ ゆうや〉と岡松 恒星〈おかまつ こうせい〉。
優哉は184cmという身長に、整ったハーフ顔。学力と優しさを兼ね備えるハイスペック男子だ。でもきっと怒ったら1番怖い。
恒星は部活中に筋トレする努力家。どんな時でも冷静に判断することが多く、彼がいうことは不思議と正しく聞こえてしまう。普段は眼鏡をかけている。
台の脇で座っているのが、西嶋 海〈にしじま うみ〉と与都 恭介〈よいつ きょうすけ〉。
海は、周りが驚くほど負けず嫌いで、卓球シューズで帰ってしまったことがあるくらいのポンコツ。調子に乗ると大失敗しがち。
恭介は、かなり大人しい男子。自分をあまり出さないが、実は紳士的な一面を持つ。友人達からは可愛がられるタイプ。
「そういえば、皆5組なんだっけ?」
「そーそー、担任ノバちゃんだからふざけられないなあ。」
ノバちゃんこと野原先生は、学校で1、2を争うほど怖い。でも実はすごく優しくて生徒思いの先生だ。
「おだぎ、3組でしょ?」
「そう!そういえば、うちのクラスに転校生来たんだよ。」
「マジ?男?女?」
「女の子!私の前の席なんだ。」
「明日見に行こーっと。どんな奴?」
「うーん。一言で言うと暗め?あんまり仲良くなれる自信はないかな…。」
「おだぎもチャラい方じゃないし、わりと仲良く話せたりして〜。」
「それはあり得る。」
「そーいやさ、ーーーーー」
いつも通り練習を終えた彩達は、終了時刻の5時を迎えたため、片付けをして体育館を出る。部室に行く前に外で涼んでいると、
「あ!彩〜!皆〜!」
ちょうど格技場からでて来た胴着姿の颯泰が手を振っていた。後ろから大和達が出てくる。実は彩をつながりに、大和達と中達も仲が良い。
「優哉達もいるじゃん!お疲れー!」
元気な陽翔が駆け寄ってくる。胴着を着ている皆は汗だくだった。
「ねー!今度皆でバーベキューとかしようよー!あんまり僕たち全員で遊んだことないでしょ?」
この一言から、私たちは大盛り上がり。
通りがかった大井先輩に、汗だくじゃんと言われて我に戻り、私たちは各々部室へ着替えに戻った。