婚活を始めたら、龍を捕まえました【完】
それから私たちは、さらに距離を縮めた。
一月後、龍さんが言う。
「結乃、ご両親にご挨拶に行きたいんだけど、いつが都合がいいかな」
それって……
「聞いてみるね」
私は、その場で母に電話を掛ける。
「あ、お母さん? 私、結乃。あのね、私、結婚したい人がいるの。彼がね、今度、お母さん達にも挨拶したいって言ってくれてるんだけど、いつがいい?」
私たちは、2週間後の週末に両親に挨拶に行くことになった。
「ただいま!」
私が実家に帰ると、母はまるで待ち構えていたかのように玄関にいた。
「結乃、おかえり」
私は、苦笑しつつ、龍さんを紹介しようとした。
けれど……
「あら? 翔馬くん? 何、結乃、結婚したい人って、翔馬くんだったの?」
そうだった。
龍さんは、私の元彼の翔馬とそっくりなんだもん。
お母さんが間違えるのも無理はない。
「お母さん、違うよ! 彼は、芳原 龍さん」
私は、龍さんに向き直って謝る。
「ごめんなさい。龍さん、昔の友人に似てるから、勘違いしたみたいで……」
私は、龍さんに説明するけれど、なんだか龍さんの表情は、不思議と強張って見えて……
それでも、全てが気のせいかと思うほど、龍さんは、私の両親にスムーズに挨拶をして、結婚の了承を取り付けた。
その後、彼を私の部屋に案内すると、彼は、思い詰めたように口を開いた。
「結乃、もしかして、さっきお母さんが言ってた翔馬ってやつのこと、好きだった?」
これは、なんて答えればいいんだろう。
お母さんがあれだけ連呼してたんだもん、龍さんもきっと元彼だと思って聞いてるんだよね?
「結乃は、俺が彼と似てたから付き合ってくれたのか? もし、俺が全然違う顔だったら、俺とは付き合ってなかった?」
「っ! ちがっ! そりゃあ、初めて会った時は、似てると思ったけど、私が龍さんを選んだのは、龍さんの話し方とか態度が気に入ったからだよ。龍さんだから好きになって、龍さんだから結婚したいと思ったの!」
どうすれば、信じてもらえるんだろう。
「いや、ごめん。ちょっと、不安になって……」
龍さんは、気まずそうに目を逸らす。
「ううん」
私は、この思いを伝えたくて、龍さんの手を握った。
けれど、龍さんはいつものような優しい笑顔を見せてはくれず、複雑な表情で考え込んでいる。
どうしよう。
何か話題を変えようにも、何も思い付かない。
その時、下から母の声が聞こえた。
「結乃! 買い物お願い!」
は!?
なんで私?
意味が分からない。
私はドアを開けて、叫ぶ。
「さっき、お父さんが行くって言ってたでしょ?」
「そうなの。お父さん、お肉を受け取りに行ってくれてるんだけど、カセットコンロのガスを頼むのを忘れてて。慌てて今、携帯に掛けたら、ここで鳴ってるのよ!」
はぁ……
つまり、携帯を忘れたお父さんの代わりにガスを買いに行けと?
「龍さん、ごめん。ちょっと行ってくるから、適当にくつろいでて。その辺の漫画とか小説とか読んでていいから」
「俺も行こうか?」
龍さんはそう言ってくれるけど、正直、この微妙な空気のまま一緒に出かけるより、少し時間を置いて、お互いに落ち着いた方がいい気がする。
「大丈夫。すぐ帰ってくるね」
私は、そう言い置いて、部屋を出た。
一月後、龍さんが言う。
「結乃、ご両親にご挨拶に行きたいんだけど、いつが都合がいいかな」
それって……
「聞いてみるね」
私は、その場で母に電話を掛ける。
「あ、お母さん? 私、結乃。あのね、私、結婚したい人がいるの。彼がね、今度、お母さん達にも挨拶したいって言ってくれてるんだけど、いつがいい?」
私たちは、2週間後の週末に両親に挨拶に行くことになった。
「ただいま!」
私が実家に帰ると、母はまるで待ち構えていたかのように玄関にいた。
「結乃、おかえり」
私は、苦笑しつつ、龍さんを紹介しようとした。
けれど……
「あら? 翔馬くん? 何、結乃、結婚したい人って、翔馬くんだったの?」
そうだった。
龍さんは、私の元彼の翔馬とそっくりなんだもん。
お母さんが間違えるのも無理はない。
「お母さん、違うよ! 彼は、芳原 龍さん」
私は、龍さんに向き直って謝る。
「ごめんなさい。龍さん、昔の友人に似てるから、勘違いしたみたいで……」
私は、龍さんに説明するけれど、なんだか龍さんの表情は、不思議と強張って見えて……
それでも、全てが気のせいかと思うほど、龍さんは、私の両親にスムーズに挨拶をして、結婚の了承を取り付けた。
その後、彼を私の部屋に案内すると、彼は、思い詰めたように口を開いた。
「結乃、もしかして、さっきお母さんが言ってた翔馬ってやつのこと、好きだった?」
これは、なんて答えればいいんだろう。
お母さんがあれだけ連呼してたんだもん、龍さんもきっと元彼だと思って聞いてるんだよね?
「結乃は、俺が彼と似てたから付き合ってくれたのか? もし、俺が全然違う顔だったら、俺とは付き合ってなかった?」
「っ! ちがっ! そりゃあ、初めて会った時は、似てると思ったけど、私が龍さんを選んだのは、龍さんの話し方とか態度が気に入ったからだよ。龍さんだから好きになって、龍さんだから結婚したいと思ったの!」
どうすれば、信じてもらえるんだろう。
「いや、ごめん。ちょっと、不安になって……」
龍さんは、気まずそうに目を逸らす。
「ううん」
私は、この思いを伝えたくて、龍さんの手を握った。
けれど、龍さんはいつものような優しい笑顔を見せてはくれず、複雑な表情で考え込んでいる。
どうしよう。
何か話題を変えようにも、何も思い付かない。
その時、下から母の声が聞こえた。
「結乃! 買い物お願い!」
は!?
なんで私?
意味が分からない。
私はドアを開けて、叫ぶ。
「さっき、お父さんが行くって言ってたでしょ?」
「そうなの。お父さん、お肉を受け取りに行ってくれてるんだけど、カセットコンロのガスを頼むのを忘れてて。慌てて今、携帯に掛けたら、ここで鳴ってるのよ!」
はぁ……
つまり、携帯を忘れたお父さんの代わりにガスを買いに行けと?
「龍さん、ごめん。ちょっと行ってくるから、適当にくつろいでて。その辺の漫画とか小説とか読んでていいから」
「俺も行こうか?」
龍さんはそう言ってくれるけど、正直、この微妙な空気のまま一緒に出かけるより、少し時間を置いて、お互いに落ち着いた方がいい気がする。
「大丈夫。すぐ帰ってくるね」
私は、そう言い置いて、部屋を出た。