ブルー、ブルージーンズ
「どうするつもりよ」

 自分でも驚くぐらい、低くかすれた声が出た。

「どうすんのよ。お金出しあって買った電化製品とかパソコンとかソファとかベッドとか。わかってる? あたしたちが別れるって、思ってるよりずっとたいへんなことなんだよ?」

「あ、おれ、プレステだけでいいよ。あとは全部、おまえにやる」

「そういうことだけを言ってるんじゃないでしょ?! なんでひとの言葉を額面どおりにしか受け取れないのよ」

「………ごめんなさい」


冗談じゃないと思った。

あたしの三年間を返して、なんて思わない。

あたしの青春を返して、なんて思わない。

あたしは、大輔と離れる未来なんて想像してなかった。

そんなこと、まったく考えたこともなくて、目の前がまっくらだ。

こわい。

すごくこわい。

バカで、だめだめで、お金もなくて、気まぐれで、きっとこの先も大輔といるかぎり安定した裕福な暮らしなんて望めないだろう。

それでも、あたしは大輔がよかった。
あたしにとっては唯一無二の男だった。
こんなにいとしくて、かわいいと思える男はほかにいない。

もしここで素直に大輔と別れたとする。田舎に戻って仕事を変えて、新しく知り合った男と妥協でつきあってみる。妥協で結婚したりもするかもしれない。そうして、大輔とすごした三年間を思い返して泣いたりするのかもしれない。

想像してみたら、ぞっとした。

冗談じゃない。


あたしの大輔を返して。

あたしの大切な生活を返して。
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