One s death -the last sword-
遠くで、ラーブルの鳴く声がする。
鈴を鳴らしたような凛とした、でもどこか切ない美しい鳴き声だが当然俺には、悠長に聞くような時間も趣味もない。
今日は、隣国に位置するサラザレット王国イグナイア国王陛下が、カスクライ王国を見物なさるのだ。
ただ見物する、というのでは聞こえがいいが貴族の間では『近々戦をおこそうとしている』ため、この王国の地理を国王陛下直々に偵察に来るらしい。
表向きの友好関係のため、ラーバン王も断る事ができなかった。
そしてこれに失敗すれば、サラザレット王国に戦をおこさせる口実を与えてしまい、更には武器の置き場所・地理を知られてしまう。
俺は、果てしなく続くような廊下を早足で歩いていた。隣には、ゆったりと歩きながら微笑んでいるレベッカ。窓際を歩く彼は、心なしか楽しんでいるような。
「…レベッ…カ、おっ前…急っがっ、ないのっ?」
「急いでますよ。レディック様と同じスピードじゃないですか」
それは完璧足の長さのせい。
しかも十中八九レベッカの足が長いせい。
「レディック様は、どうして急がれるのですか。ラーバン国王陛下は来なくていいと言われていたのに」