One s death -the last sword-
俺は勢いをつけて立ち上がると、ドアの側にある洗面台へとゆっくり歩く。
歯ブラシを口にくわえると、涙が出るくらいのミントが鼻を通った。
必要以上に強い力で磨き始めると、うっすらと鉄の味。
「血い、出た」
「…ラクトンが、朝飯を食べるようにと。あっ、俺は食べてきました」
「何で!!」
「ラクトンに、剣の稽古をつけてきた時に。先に2人で食べました」
歯ブラシを口にくわえたままレベッカを睨むが、レベッカは無表情のままだった。
別に人見知りが激しいというわけではないのだが、やっぱり1人で食べるとなれば気がひける。
「朝から食べる気なんてないんだけど」
うがいの合間にそう言うと、鏡ごしにレベッカの顔が見える。
何か言っているが、その声は水の音にかき消された。
柔らかいタオルに、顔を埋める。
「俺は、森の方に行ってきます。レディック様、大人しくしていてくださいね」
よく分からないシャツとズボンを脱いで、差し出された服を着るとようやく頭が起き始めた。
窓の外は、朝日が輝く青空が広がっている。


朝の空気はすがすがしいのに、この部屋の空気は重く、暗かった。
長さが3mぐらいある机の向こうには、何故か気難しい表情をした老人。
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