One s death -the last sword-
たった1人の私室へ戻ると、ようやく肩の力を抜く事ができた。
先程下がらせた侍女が置いていった水を、一気に飲み干す。
今こうして当たり前のように執務をこなしていると、昨日までの出来事が嘘のように思えてならない。
自分は今まで、一体何をしていたんだろう?
他国の王子を誘拐し自分の国に住まわせて、全てがバレれば『面白くない』と吐き捨て、殺そうとする。
まるで、子どもじゃないか。
どれ程の事をすれば、罪を償えるのだろう。
…いや、あの子ならそんな事望まないな。
今、無意識に微笑んでいる自分に驚いた。
花瓶に差してある薔薇の花を見つめながら、いつかラ・サズリック王国に贈ろうと心の底で決意する。
その時は、そう遠くない方がいい。
「ラーバン王、いらっしゃいますかぁ」
「ザスクートか」
顔だけを扉の方に向けて、ザスクートと会話をする。
「今戻りましたけど…お疲れのようですねぇ?」
「……少しな」
「下がった方が、いい子ですかねぇ?」
「いい。そこに座れ」
前のソファーを、顎で示す。
ザスクートは何も言わずに、そこに座った。
賢い、全てを見通した上でのこの無礼さ。
そこが、他の兵士と違う接し方を自然に求めさせる理由なのだが。
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