One s death -the last sword-
「今回のお仕事は、正直最低でしたけど」
「…だろうな。で、収穫は?」
事前に渡した数十枚の資料と、新たな情報が書かれた紙が机の上で散らばる。
新たな情報は、ザスクートがその手で書く。
いつも誰かに書かせろ、疲れたお前が書く必要はない、というのだがザスクートはそれを否定する。
『そんな事して、書いてくれたそいつが間者だったらどうするんですかぁ』
成程、と思った。
ザスクートの主な仕事は、正直間者だ。
だから、そういう事には人1倍敏感なのだろう。
「俺が調べる程の内容ではありませんでしたけど」
「そう言うな。お前以外では、とてもじゃないけど務まらない仕事だ」
1枚目の情報に、目を通す。
前が貴族だった為、筆跡は綺麗だ。
その性格に、似合ってないくらい。
「まあ、収穫だな」
小さなため息が聞こえる。
「…ラーバン王」
「何だ?」
「ラ・サズリック王国に行ったんですか?」
1瞬だけ、沈黙が流れる。
その不自然な沈黙も、俺の言葉で破られた。
「ああ、行った」
「区切りを……つけられたんですか?」
ザスクートらしくない、躊躇いがちの問いかけがもどかしい。
「レディックに、か?それとも……?」
ザスクートの顔が、少しうつ向く。
< 190 / 201 >

この作品をシェア

pagetop