One s death -the last sword-
本当に言っていいのか、迷っているのだろう。
「らしくないな。ザスクート?」
「……ベルカ王女、にです」
ザスクートに微笑みを向けて、許しを与える。
頭の中では、ベルカを育てたラ・サズリック王国がうかんでいた。
「区切りは、もうとっくについていたのかもしれないな」
「……」
背もたれに、体を預ける。
ザスクートが、目にかかった髪の毛をはらった。
きまりわるげに、咳払いする。
「今でも、愛していいんでしょうか?」
ザスクートは、俺に問いかけてはいなかった。
自分自身に、自分自身の心に、問いかけているのだ。
「過去に愛した、これ以上ないってくらい愛した人間を、今でも愛していいんでしょうか?」
胸の奥が、微かに温かくなる。

ベルカは、最期まで俺を愛してくれていた。

「……もう、この世にいなくても」
うつ向いた顔が、更にうつ向く。
もう、認めてしまう事しかできない。

今でも、逢いたくなる。

少しの事で、ベルカを求めてしまう。

この手で、最愛の者を殺してしまった。


今でも 逢いたくなる。


「いいんじゃないか、愛しても」
多分1生彼女を越える人は、現れないのだから。

「ラーバン王」
ザスクートの顔が上がる。
< 191 / 201 >

この作品をシェア

pagetop