One s death -the last sword-
今までにないような、心臓を貫くような感情が押し寄せる。
ノックもせずに、震える手でドアノブをつかみゆっくりと押していく。すぐに薔薇のような気高いにおいが鼻をついた。
ぎゅっと目を瞑りながら、「失礼します」と声をかけると誰かが動く音がした。
「父…上」
目を開けると、眩しいくらいの光が暖かく差す。
ドアを閉めると、この部屋に2人きりという事を再確認してしまい、足が震えた。
「…レディックか?」
威厳に満ちたその声に、いつもなら後ずさりしてしまっていたが、今日は足すら動かない。
「はい…父上、聞きたい事があります」
この部屋に、寒さはなかった。
だが、氷のような冷たい雰囲気が漂っている。
「…」
何かが、壊れてしまうような気がした。
何もかも捨てて、全てを始めからやり直したい。
……逃げたい。
「……ラ・サズリック王国を…ご存知ですか?」
頭の中で、何かが静かにはじけた。
王が、見えない場所でフンと鼻を鳴らす。
「…つまらなかった」
「え…?」
その時、耳をつんざくようなサイレンが響きわたった。
城中に響くそのサイレンだけを待っていたかのように、何十人もの兵士が部屋に入ってくる。
剣を向けられ初めて…改めて気付く。
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