One s death -the last sword-
そうすれば、こんな思いを体験する事もなかったのに。
「レディック様…」
俺は涙を拭おうとしたレベッカの手を振り払い、腕で目を隠した。
「…っ…何人殺したと思う!?何人の命を…!!」
サワストも、この手で殺してしまった…。
罪のない兵士の血で汚れた剣。
今レベッカは、どんな顔をしてるんだろう?
「もう嫌だ!!…なんでこんな!!」
ついに俺は、泣き崩れて地面にうずくまった。
裏切られた悔しさと、自分に対しての怒りが混ざっては涙として流れ落ちる。
自分の全てが嫌になり、狂ったように髪の毛を強くひっぱる。
痛みでまた涙が流れ落ち、俺は手の甲を強く噛んだ。
しゃくり上げながら自分の闇にこもると、ついに1人きりという錯覚に落ちいる。
この世界に、良いところなんてひとつもない。
逃げ出したい。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ…」
「レディック王」
「王なんて呼ぶな」
遠くから聞こえるラーブルの鳴き声が、耳に心地よく響く。
だけど光を遮断した今では、死神の誘い声のようだ。
「俺は王なんかじゃない。…人殺しだ」
「違う。貴方はラ・サズリック王国の王太子殿下です。れっきとした、ラ・サズリック王国の…。人殺しなんかじゃ、決してない…」
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