One s death -the last sword-
忘れていました」
少しずつ暖かくなっていく空気が心地よい。
だけどレベッカのまわりには、張りつめた空気が漂っていた。
こんなにも感情を表に出したレベッカは、初めて見る。
「…それから、どうやってカスクライ王国に来たんだ?」
「なにしろ、全部記憶がなかったわけですから、色々な国をまわったんです。そしてカスクライ王国で出会った人の中に鍛冶屋の方がいたので、剣を頂いたんです。…この剣」
レベッカは、腰に差してある長剣を軽く叩き、優しく撫でた。
「それで剣技をしていくうちに、城で騎士として住まわせてもらう事になりレディック様と再会しました。召し使い達に話を聞くと、2か月間もレディック様は眠り続けているらしく、俺が記憶をなくして目覚めたのも同じ時期でしたから縁を感じて、身辺警備にしてもらったんです」
「嫌な縁だな…」
そろそろ瞼が重たくなってきた。
心地よい暖かさが体を包みこみ、力が抜けていく。
少し開いた無防備な口に、小さく甘い木の実を押し込まれるが、それさえ出そうとできない。
―俺は、何?
放りこまれた木の実は甘く、舌先で転がすうちにざらざらとした粒を見つけた。
睡眠薬という名前の、甘い、クスリ…………。
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