One s death -the last sword-
一瞬視界がぼやけ、数回瞬きを繰り返した。
とても遠い夢を見た気がする。
「…起きられましたか、レディック様」
額に、冷たく心地よい温度のレベッカの手がのり、俺はもう1度目を閉じた。
後を追うように、手の位置を目の上に変える。
指の隙間からもれるランプの明りが眩しい。
「俺、いつ寝たんだろう?」
「眠られたんじゃありませんよ。倒れたんです」
話す事すら嫌になり、目を閉じたまま口端だけで笑う。
「多分、過労です。大分眠ってましたよ」
「そっか…。今どこら辺?何分くらいで着く?」
「パーソン王国は抜けました。もう少しでバース国も抜けますから、後半時間くらいだと思います」
レベッカの話を聞きながら、俺は別の事を考えていた。
あの夢は、何だったんだろう?
確かにあれは、俺とレベッカだった。
10を過ぎたばかり、という事は。
「ラ・サズリック王国…」
「え?」
夢ではなく、本当に現実におこった事のように鮮明に思い出せる。
頭の奥が、殴られたように痛い。
「レディック様、今なんて?」
「…俺さっき、ラ・サズリック王国の夢を見たんだ」
「ラ・サズリック…?」
レベッカが、開きかけた俺の目を不審そうに覗く。
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