One s death -the last sword-
「…ラーバン王、お庭にお散歩に行きませんか?」
ベルカに誘われて、ラーバン王は素直に立ち上がった。
そんな光景を見ながら、側にひかえてあった召し使い達は顔を近づけあい微笑みあう。
ラーバンは、そんな召し使い達をちらりと見ただけで何も言わなかった。
「少し寒いが、大丈夫か?…まぁ、薔薇は見頃なのだが」
「えぇ、大丈夫です。外に出れば、寒さなんて忘れるでしょうし」
低く笑うベルカの横顔を見ながら、我知らず微笑む。
18にもなって、ラーバンはこの想いの正体を見つける事ができなかった。
心の底を燃やされるような熱い情熱と、温かくずっと寄り添っていたいと思えるような、この気持ち。
静かに空をきっていく手が、もう一方の温かさを求めていた。
後1歩を踏み出せず、いつも後戻りしてしまう。
当たり前の事を、ベルカと共にするだけでいい。
美しいものを見て、『美しい』というだけでいい。
そんな当たり前の事をしたいと思うのは、異常なのだろうか?
不可思議な胸の奥に広がっていく想いに、ラーバンはため息をついた。
庭に続く扉を押し開けると、とめどなく溢れる噴水が目に飛び込む。
周りに植わったモミの木は、綺麗に切り揃えられていた。
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