翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか
一 最年少の監察医
むせ返ってしまいそうな鉄の臭いが漂い、辺りはまるで戦場のようにガラスや物が壊され、多くの人が傷付いて倒れていた。その中にはすでに動かなくなった体もある。

そんな場所で、一人の白衣を羽織った女性がいた。胸元にはエメラルドのブローチが煌めいている。所々に傷を負い、血が流れていた。しかし荒い息を吐きながら、足を止めることなく廊下を歩いていく。その耳にはスマホがあった。

「何故、何故そのようなことを仰るのですか!?」

女性は人と通話をしていた。通話をしている人物からの言葉に、女性の目から涙が流れていく。

「私は……私は……あなたを助けます!あなたが「逃げろ」と仰るなら、あなたを連れて逃げます!あなたが戦うのならば、私も戦います!初めて会ったあの時から、私はあなたを失わないと誓ったのです!だからーーー」

その刹那、女性の足が止まる。女性の耳に響いたのは銃声。それは、通話をしている相手が撃たれたということだった。
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