翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか

「……」

絶望、憂い、やるせなさ、様々な感情が渦巻き女性はその場に崩れ落ちる。声は出すことができず涙だけが落ちていった。

しばらく静かに泣いていた女性だったが、周りに転がっている職場の仲間だった者たちの亡骸を見て激しい怒りが心に生まれていく。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

女性は大声で叫ぶ。今度は近くで銃声が響いた。そして、自身の体が赤に染まる。

「……守れなくて、ごめんなさい」



「蘭ちゃん、蘭ちゃん！しっかり！」

体を揺さぶられ、神楽蘭（かぐららん）は目を覚まして飛び起きた。また悪夢にうなされていたのだ。白いワンピース型のパジャマは汗で濡れ、荒い息を吐く蘭をこの家の主であり蘭の職場の所長でもある紺野碧子（こんのあおこ）が心配げに見つめている。

「大丈夫？かなりうなされていたわ」

「……申し訳ありません」

蘭は息を整え、碧子に謝る。心配げな顔をしていた碧子は微笑み、「いいのよ」と蘭の頭を撫でた。