翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか
「解剖した結果、千鶴さんは急性硬膜下血腫だとわかりました」

「急性硬膜下血腫?」

首を傾げた花鈴に対し、蘭は説明を始める。

「急性硬膜下血腫とは、頭蓋骨のすぐ内側にある硬膜の内側で脳の表面に出血を起こし、出血した血液が硬膜の直下で脳と硬膜の間でに溜まり、短時間のうちにゼリー状に固まって脳を圧迫します」

「脳が圧迫されて千鶴は死んだってことですか?」

花鈴の声が震え、圭介が苦しげな顔をする。蘭は躊躇うことなく「はい」と頷いた。花鈴の目から涙がこぼれ、圭介が花鈴にハンカチを差し出した。

「急性硬膜下血腫はほとんどが頭部外傷によって引き起こされます。千鶴さんはどこかで頭を打ったりしませんでしたか?」

蘭の問いに花鈴は「わかりません」と首を横に振る。そして涙を拭いながら言った。

「私、私が、千鶴の解剖を依頼したのは、千鶴に特別な想いーーー愛情を抱いているからです」

「愛情?」

圭介の問いに花鈴は頷く。そして再び口を開いた。
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