翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか

「私は、女性にしか恋することができないんです。レズビアンと呼ばれる存在です。千鶴のことが仲良くなっていくうちに好きになって、本気で彼女を愛していた！だから真実を知りたいと思ったんです」

花鈴の想いに圭介は瞳を潤ませる。蘭は花鈴を見つめたまま、その表情が何を意味するのかはわからない。

「でも、同性愛は偏見の目で見られます。私の父だってそうです。同性愛なんてありえない、気持ち悪いって……。だから、誰にもこの想いを打ち明けることはできませんでした。でもお二人には……千鶴を解剖してくださった二人には、きちんと話したいと思ったんです」

泣き続ける花鈴を、蘭は無表情のまま見つめる。しかし、その手はエメラルドのブローチを握り締めていた。



同時刻、都内でも有名な大学病院の一室で二人の男性が話をしていた。クルリと椅子を回転させ、メガネをかけた五十代ほどの男性が口を開く。

「では、あの化け物のそばに今は探偵事務所の人間がいるということか……」