翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか

「ええ。……どうします？」

「もちろん教えてやらないとな。あの女が危険だということを……」

男性はテーブルの上に置かれた写真を見つめる。そこには白衣を着たスモーキーベージュに髪を染めた若い男性が写っている。

「あの人殺しが……」

男性はそう言い、拳を握り締めた。



花鈴の家を出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。

「これからどうするんです？」

圭介が訊ね、蘭は「千鶴さんのお母様が営業している食堂に行って話を聞きたいと思っています」と答えた。その時、互いのお腹が音を立てる。

「申し訳ありません」

蘭はすぐに謝る。お腹が鳴るなど緊張感のない証拠だ。表情は何も変わらないものの人に聞かれてしまうと恥ずかしいと感じてしまう。

「ついでに食堂で食べていきましょうか。神楽さん、お昼ご飯も食べずに仕事してたわけですし」

圭介がそう言い、蘭の手を取って食堂へと足を早める。その手は大きくて温かい。