翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか
「食べている時、人は無防備になります。そうしている間に攻撃されかねません」

まるで戦場に立っている兵士のような言葉に、碧子は否定することなく難しげな顔をする。彼女がその言葉を発する理由を碧子はよく知っているからだ。

「そういえばね、今日から神無月探偵事務所から新人の探偵さんが研修に来るんですって!二十二歳だそうよ!」

あなたと歳が近いわね、そう言う碧子に対して蘭は「そうですね」と返す。研修に探偵がやって来るなど初めて聞かされたことだが、蘭は驚く素振りすらない。まるで感情がないかのように無表情のままだ。

蘭の働いている世界法医学研究所は、司法解剖はもちろん民間人から依頼された解剖も行う場所だ。また、世界にある法医学研究所と協力することも多く、世界法医学研究所は日本人監察医より外国籍の監察医の方が多い。色んな国から人が集まっているのだ。

そんな世界法医学研究所は、警察だけでなく探偵事務所にも力を貸すことがある。神無月探偵事務所は数ある探偵事務所の中で一番よく協力し合う事務所だ。
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