翠玉の監察医 誰を愛したっていいじゃないか
「蘭!guten Morgen!(おはよう!)」

女性は満面の笑顔で蘭に抱き付く。蘭は抱き付かれても驚くことなく「おはようございます」と返した。蘭に抱き付いた女性の名前はゼルダ・ゾルヴィッグ。ドイツ人の監察医で蘭にこうして抱き付いたり話しかけたりしてくれるのだ。

「昨日ね、うちのHund(犬)とドッグカフェに行ってきたの!コーヒーがおいしかったわ」

そう言い、ゼルダは昨日の写真を蘭に見せる。そこにはドッグランではしゃぎ回るシェパードや犬用のスイーツ、そしてゼルダが飲んだコーヒーの写真があった。

「楽しそうですね」

蘭がそう言うと、「今度仕事が二人揃って休みだったら一緒に行こうよ!でも、鳥カフェとかもいいなぁ〜」とゼルダは笑う。蘭は楽しそうなゼルダを見つめ、時おり相槌を打っていた。

駐車場を歩きながら蘭がゼルダの話を聞いていると、ゼルダが不意にかばんの中に手を入れ始めた。そして「しまった!」と言う。
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