離婚前提マリアージュ~エリート副社長と育てる愛の花~
世良さんが入室してこなければ、私と副社長は今頃、キスを交わしていた。
副社長は十時から会議に行き、私と世良さんの二人になった。

「ディナーは美味かったか?遊佐」

「あ、はい…」

世良さんは私の同じ大学の先輩。
『高屋』に入社後、新入社員の研修で再会した。

私の希望は得意の語学を生かした百貨店の花形部署『外商部』だったけど、世良さんが私を秘書に推薦し、秘書課に配属。
その後は彼と同じく副社長の秘書に就いた。

「ボブの死から立ち直れそうか?」

「え,あ・・・」

ボブの死よりも副社長の方に気を取られていた。
「相当、副社長も君の元気の無さを心配していたから…」

「世良さん…私…」

「副社長と結婚するんだろ?おめでとう…遊佐」

「それをどうして・・・?」

「副社長…遊佐に手を出した…だから責任にとって結婚するって言ってたぞ…」

「でも・・・その結婚は…」

「何?」

「別に…」

私は言葉尻を濁して、口を噤んだ。
離婚前提の結婚なんて…他人が訊いたら変に思われちゃう。

「でも・・・残念だ…」

「何が?」

「別に…」

世良さんはノートパソコンに顔を向けて、社内メールに目を通した。




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