離婚前提マリアージュ~エリート副社長と育てる愛の花~
神戸さんが私を部屋まで送ってくれた。

「何か淹れますね…」

「いいよ…俺は帰るし…」

「でも・・・じゃ傘…返します」

私は右足首を痛みを堪えながら奥のクローゼットに行って、彼から借りた黒の折り畳み傘を取りに行った。
玄関先で待つ彼の元に戻った。
時間がかかったけど、彼は私の姿を見るなり優しい穏やかな笑顔を湛えた。
「これです…神戸さん。助かりました…ありがとう御座います」

「どういたしまして」

彼は傘を受け取り、ブリーフケースに忍ばせる。

「『高屋エルネ』は大丈夫だよ。梓」

「神戸さん…」

「…まだオープンしたばかりだ。高屋副社長が焦るのは分かるけど…長いスタンスで見ないと…ひとりで抱え込むなとアドバイスしてやれ…」

「ありがとう…」

「それに…『高屋エルネ』は『高屋』と『エルネ』の業務提携したショッピングモールだ。『エルネ』のメインバンクは『帝和銀行』だ。いざとなれば、『帝和銀行』が手を貸してくれる。『花菱銀行』の令嬢は高屋副社長が君を選んだから…躍起になっているんだよ…でも、二人の間には子供が生まれる。それは強い武器だ。だから…身を引くとかそう言うコトは考えるな。梓。あの時と同じになるぞ」
私は彼が『帝商フーズ』の副社長のご子息だとは知らなかった。
彼と交際していた時も見合い話が舞い込み、彼の父親から別れるように言われ、一度は身を引いた。
結果的には見合い話はなくなり、元の鞘に戻ったんだけど。
彼にスキな人が出来てしまい、私達は終わった。
「神戸さん…」

「俺は君を捨てた男だけど…君の幸せを願っている。幸せになれよ…梓」

「うん」

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