離婚前提マリアージュ~エリート副社長と育てる愛の花~
カラダの動かせない私はストレチャーで移動し、NICUの保育器の中で治療を受ける我が子と対面した。

「名前は雅(マサシ)君。彼の祖父に当たる高屋知樹さんが二人に代わって名前を付けた」

「雅・・・」
保育器の中で眠る雅。
儚げに映る我が子の姿。
今にも壊れてしまいそうな繊細なカラダ。
でも、雅は頑張って生きようと横隔膜を動かし、息をしていた。


「搬送されて来た時…君は意識不明の状態で…母子と共に危険だった…僅かな希望に賭けて…君の怪我の処置をしながら、緊急帝王切開で胎児を取り出した。君も二週間意識が戻らなくて…赤ちゃんも危険な状態が続いた…」

槇村先生は搬送された当時の状況をキチンと説明してくれた。

「雅樹さんには会えませんか?」

「・・・彼はまだ・・・ICUのベットの上だ…妻である君にはちゃんと言わないといけないんだけど…高屋夫妻から止められてて…」

「・・・」

「夫妻と話をして、もう少し君のカラダが回復したら、話す手はずを整える。それまで、待っていて欲しい」

槇村先生の口調は重かった。

いつもなら、軽口で冗談を交えて教えてくれるのに。

私に隠された雅樹さんの状態は厳しいのだろう。

お義父さん達も口を噤み、教えてくれない程だから・・・




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