病室の外に咲く花のように
episode.1 君との約束

高校に入学して、数ヶ月が経った。
共学だっていうのに、全然彼女もできず1人。
いつものように学校に登校し、授業受けて、部活して、帰る日々。
僕には、恋愛なんて...。

僕の名前は、まさと。高校1年生で、サッカー部に入っている。中学からサッカー部に所属していたこともあり、唯一1年生の中でメンバー入りさせてもらえるようになった。彼女はいない。サッカーができるってだけで、モテてるとは思っていないし、恋なんてめんどくさいくらいだ。

ある朝、朝練のために早めに登校した。
教科書類が入ったカバンを教室に置きに、いつものように教室に入った。
いつもなら、朝は誰もいないはずの教室に珍しく誰かが登校していた。
よく見ると、同じクラスのさくらだった。
さくらは、クラスの中というより学校中から人気のマドンナ的存在である。

「おはよう」
そう、声をかけた。
しかし、さくらは窓の外をじっと眺めていた。
そりゃそうだよな、僕なんかが挨拶したくらいで返してくれるような子じゃないよな。
そう思った時だった。
朝の涼しい風が彼女の近くにあるカーテンがふわっとなった。
それと同時に、彼女の綺麗なストレートの髪がなびいた。
彼女は、そんな風の問いかけに返すかのように微笑んだ。

そして、ようやく僕の存在に気づいたようで
「まさとくん。おはよう!」
そう、挨拶をしてくれた。

僕はさくらのあんなにも優しい微笑んだ顔に、惹かれた。

さくらが挨拶をしてくれた途端、自分の顔が火照っていることに気づき、恥ずかしくなった。
その場を逃げるかのように、部活の道具を持って、部室に向かった。


さくらside

いつもならまだお家にいる時間に、学校に着いた私。

私の名前は、さくら。友達もそんなにいない。唯一の友達は、みこ。小学校からずっと一緒にいる、大の仲良し。みこがいうには、学校中から人気でマドンナ的存在なんだって言われるけど、そんなことないよ。みこは、いつも大袈裟すぎで、 きっと気を使って言ってくれてるんだと思う。

いつもだったら、早起きなんてしないのに...。
今日はなんだか、気分が上がってるのか早起きして、学校にも早く着きすぎちゃった!

教室の窓から見える校庭の花壇に、たくさんの花が咲いてる。
綺麗で、立派で...。
花のように、綺麗に立派な女性になりたいな。
朝のそよ風も気持ちいいな。

ふと後ろを振り返ったら、同じクラスのまさとくんがいた。
「まさとくん。おはよう!」
挨拶をしたんだけど、彼は私の挨拶に返してくれることがないまま、教室を出て行ってしまった。

私、まさとくんに何か気分を損ねるようなことしちゃったのかな。

今日は、放課後に病院でこの前受けた、検査の結果を聞きに行く日。
きっと、大丈夫だよね!
だって、私まだ15だもん。

〜放課後〜
私は、病院へ向かった。
お母さんは、少し暗い顔をしていてちょっと気になっていた。
そして、看護師さんが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

ガラガラガラ

「さくらちゃん。この前の検査結果なんだけど、しっかり聞いて欲しいんだ。」
なんでこんなに先生は、へんな言い方をするんだろう。
この時は、何も知らなかった。
これから待ち受ける、苦しい日々が来るということに。
「先生。私、今日いつもより早く起きられたんです。気分が良かったのか、スッキリ起きられて...。だから今日の検査結果もきっと大丈夫だって信じて来たんです。」
「あのね、さくらちゃん。君は、これから入院してもらわなきゃいけないんだ。この前の検査結果だけど、脳に腫瘍ができてて、簡単に取り除ける場所なら、手術をしてしっかり治療を受ければ治る可能性がぐんと上がるんだけど。君の場合は、とても入り組んでいるところにあって、取り除くことが少し難しいんだ。」
「冗談ですよね。だって、こんなに元気で病気なんて...。ありえないですもん。」
「さくら、こんな時に先生が冗談言うわけないでしょ?」
「死んじゃうの?私。これから、もっといろいろやりたいことあるのに。」
「ちゃんと信じて、治療やリハビリ頑張れば絶対に死んだりしないから。一緒にこれから頑張っていこう?」
「...。分かりました。」
さくらは、その日眠ることができなかった。死ぬかもしれない恐怖、学校にも行くことができない辛さで...。

次の日…
「さくら、おはよう!ってさくら!?そのクマどうしたの??」
そう心配して声をかけてくれたのは、中学生の頃からの親友、まなだった。
「ちょっとね...。まな、あのさ明日から学校お休みするから。お昼ご飯一緒に食べれないや。ごめんね...。」
「えっ、体調悪いの?お昼は別に大丈夫だけど、うちら親友でしょ?隠し事して欲しくないな。」
「...。ごめん、まな。」
さくらは、親友のまなには隠し事などしたくなかった。そのため、素直に事情を話した。
「実はね...。」
さくらの病気のことを聞くと、まなは
「そっか。さくら、死んじゃうとかもう長くないとか諦めちゃダメだよ?諦めたら、本当に現実で起こっちゃうよ?だから、絶対に死なないんだ!治すんだ!って希望を持たなきゃだめだからね!」
まなにとってさくらは、本当に大切な親友。誰よりもさくらのことを理解しているつもりだった。だかこそ、今回はいつもより強めに希望を持つように言った。さくらの背中を押すことしかできないと分かっていたから。
「ありがとう、まな。私、治療頑張る!」



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