打ち上げ花火とミルクティー
母親は、貧乏な家に育ったらしい。

璃梨は母親の家族、つまり自分の祖父母に会った事はない。

母親が貧乏だった頃の記憶を抹消する為に一切の連絡を絶っていた。

璃梨は祖父母の話を聞いた事すらなかった。

元々金持ちだった父親と結婚したのも、もちろん偶然などではない。

昔からあまり勉強も出来なくてその上貧乏だった為に、母親は中卒。

就職先も小さな工場で、生活も大変だったらしい。

だから、自分の娘には同じ思いをさせたくな
いという気持ちから、今の教育方針が確立した。

その母親の気持ちを知っていたからこそ、
璃梨は今まで母親に従ってきた。

でも、今は疑問に思う。

自分が出来なかった事を、したかった事を娘にさせようとしているだけなのではないだろうか。

格差に対する復讐の為に自分や父親を利用しているだけなのではないだろうか。

璃梨はそう思い始めていた。


「ご飯はいるの?」


母親は不機嫌そうな声で言った。

璃梨のテストの成績が気に食わなければ、しばらくは機嫌が悪い。

それを解消するには学校や塾の小テストなどで満点を取らなければならない。


もちろん、部活やバイトなどはさせてもらえない。

こずかいはたんまり貰っている璃梨だが、平日の昼は学校、平日の夜と学校が休みの日は一日中塾か図書館にいるので、金を使う時間がないのだった。
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