打ち上げ花火とミルクティー
「いらない」


塾から家に帰ってくるまでは空腹を感じていたが、母親の声を聞いている内にすっかり食
欲がなくなってしまった。


「あ、そう」


冷たい反応だった。

璃梨は母親に聞こえないようにため息をつき、リビングを出た。


階段を上がり、唯一の安らぎの場所とも言える自室に入る。

しかし、そこにも娯楽はほとんどない。マンガ、テレビ、パソコンも一切禁止されている。


携帯電話は持たされているが、毎日欠かさず母親のチェックが入る。

メモリーに入っているのは、両親と数人の友
達だけだ。

その友達というのも、母親が選んだ。あの子と友達になりなさい、と。

そんなもので本当の友達になれるはずもなく、璃梨には気心の知れた友達というものが一人もいなかった。

彼氏など、もってのほかだ。


着替えの為、クローゼットを開いた。

服は、母親が勝手に買ってくる。

璃梨の部屋のクローゼットには、ズボンは学校の体操服しか入っていない。

あとは全て母親の買ってきた少女趣味の服ばかりだ。

テレビも雑誌も見る事はないが、それでもその服が今の流行りからはほど遠いものだという事くらいはわかった。

そんな物を身につける気分になれなくて、璃梨は制服のままベッドに横になった。
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