あいつの隣にいる方法
「…い、おい、ハナ。」

揺さぶられたので、仕方なく顔をあげるとそこには真斗がいた。

「あれ、まだ行ってなかったの。」

「今から行くところ。お前、こんなところで寝るなよ。」

「いいじゃん。誰にも迷惑かけてないし。」

「先生に見つかったら怒られるぞ。それより、これ、持ってて。」

「何これ」

無理やり手にもたされたあいつの荷物。

「タオルと水筒。」

そんなの見たら分かるし。

不満を全面に出したような表情であいつの顔を見上げる。

「グラウンドまでそれもってきて。終わったら閉会式だから取りに行けないから。」

「他の人に頼めばいいじゃん。山田君とか。」

「一緒に出るから無理。俺、時間ないからもういくから。じゃあな。」

誰も引き受けるなんて言ってないよ。

離れていくあいつの背中に声をかけるが届いてはいないだろう。
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