あいつの隣にいる方法
話している内容は分からないけど、女の子が「真斗君」と呼んだ声だけクリアに耳に届いた。
すぐそばまで来ていたあいつは私がいることに気が付いた。
「お前、来てるんだったら、早く持って来いよな。まだあそこにいるかと思った。」
「誰もいいよなんて言ってない。」
そう言ってタオルをあいつに投げつける。
高校で私以外にも名前を呼ぶ女の子がいたことにショックを受けていた。
「お前、まだ怒ってんの。でもありがとう。」
頭をポンポンとする。そばにいたはずの女の子はいなくなっていた。
「髪、崩れるからやめてって言ってるでしょ。」
私は可愛くない反応しかできない。
「ほら、整列し始めてるから行くぞ。」
「ね、水筒は?」
もらう、というと私の手から持ち上げた。