あいつの隣にいる方法

考えることを放棄するように音楽にひたりはじめる。

いつのまにか曲は変わり、軽快な洋楽が流れていた。

トントンと肩をたたくと同時に片方のイヤホンが外された。

パッと振り返るとそこにいたのは、あいつだった。

「へぇ、お前こんなの聴くんだ。」

「ちょっと、何やってんの。」

「ん?イタズラ?」

なにがイタズラだよ。びっくりしたよ。

アナウンスが流れホームに電車が入ってきた。

車内は少しだけ混んでいた。

座席に座ることなく、はじの方で壁にもたれかかるようにして立つ。

その前にはあいつが立った。

「お前、身長ちいせぇのな。イヤホンしずらいんだけど。」

「うるさい。そもそも人のイヤホンをかってに奪ってるのが悪い。」

あいつがじっと私を観察し始める

「疲れてんの?」

「そりゃ、一日中外にいたら疲れるでしょ。」

あいつはちっとも疲れた素振りなんて見せずに平然としている。

体力が有り余ってるのかよ、うらやましい。
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