黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「伊尾さん……、し、心臓が壊れそうです」

 耐え切れなくなった私が伊尾さんの胸に顔をうずめて泣き言をもらすと、伊尾さんは冷静に口を開く。

「このくらいで心臓が壊れてたら、取締官なんてやっていけないだろ」
「そ、そうなんですけど、でも、ドキドキしすぎて限界です……っ」

 私は顔を上げ、涙目で伊尾さんに訴える。
 すると、伊尾さんは「ぐっ」と言葉に詰まり、眉を寄せた。

 いつも冷静で俺様な伊尾さんらしくない表情に、思わず目を奪われる。

「あー、もう……。限界はこっちのセリフだ」

 舌打ちとともにつぶやかれ、よく聞き取れなかった私は首をかしげた。

「伊尾さん……?」
「なんでもない」

 誤魔化すようにかぶりを振った伊尾さんに私が目をまたたかせたとき、耳につけていたイヤーモニターから声が聞こえてきた。

『伊尾、佐原。ターゲットが店に入った』

 店の外にいる仲間からの連絡だ。
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