黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 すると、長身の男の人に目が留まった。
 
 その瞬間、条件反射のように心臓が飛び跳ねる。
 
「美緒、どうしたの?」
 
 私の頬が赤くなったのに気づいた恵が、首をかしげた。

「いや、ええと……」

 なんとか誤魔化そうとしたけれど、私の視線は彼にくぎ付けになる。
 そこにいたのは伊尾さんだ。
 
 私服姿の彼は、手に花束を持っていた。
 
 白いダリアやカスミソウ、淡い緑色のバラが入った、清楚で美しい花束だった。
 
 仕事中の伊尾さんは男らしい印象が強いけれど、長身の彼が片手に花を持ち歩く様子はものすごく絵になる。
 
 伊尾さんが自分のために花を買うとは思えない。
 きっと、誰に贈るための花束なんだろう。
 もしかしたら、デートとか……?
 
 そんな考えが頭に浮かんで、心臓が凍り付く。

 今までずっと伊尾さんは仕事一筋で、女性の影がなかった。
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