黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 私は彼を引き留めるために、必死に言葉を探す。

「伊尾さんは、彼氏じゃなくてただの職場の先輩だから!」

 私が必死に言うと、彼はようやく足を止めてくれた。
 ゆっくりと視線をこちらに向ける。

「彼氏じゃなくて、ただの、職場の先輩なんだ?」

 呉林くんの問いかけに、何度も首を縦に振ってうなずいた。

「でも、前にクラブで会ったときは、恋人だって言っていたよね?」
「あれは、恋人のふりをしていて。ほら、伊尾さんはかっこいいから、女よけっていうか……」

 しどろもどろになりながらなんとか言い訳をする。

 呉林くんは「ふーん」とつぶやき、薄い唇をわずかに引き上げた。

「やっぱり、嘘をついていたんだね」

 呉林くんの確信に満ちた笑顔を見た瞬間、背筋に一瞬寒気が走った。

「や、やっぱりって、どういう意味?」
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