黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
7 自覚と焦り――伊尾side
7 自覚と焦り――伊尾side
毎年この日になると、花束を買う。
俺が花屋に行くのは、一年に一度だけだ。
店員に『白っぽい花束を』と大雑把な注文するのは、故人に手向けるのにふさわしい花の名前なんて知らないから。
たぶんこんな綺麗な花束をもらったところで、本人は『ガラじゃねぇ』と苦笑いするんだろう。
けれど、ぶつける先のない怒りと収まらない後悔を持て余し続ける俺には、毎年命日に彼が殉職した場所に花を手向けるくらいしかできなかった。
花束を手に、なんの変哲もない歩道の途中で足を止める。
ここで五年前、先輩取締官の大崎さんが殉職した。
俺の目の前で、突然薬物中毒者に刺されたのだ。
その光景を、今でも夢に見る。
あのとき、一秒でも早く俺が異変に気が付いていれば、大崎さんを助けられたかもしれない。