黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 どうしていいのかわからない、というように下がった眉尻。
 動揺のせいで今にも涙がこぼれ落ちそうなほど潤んだ瞳。
 真っ赤になった頬に、薄く開いた唇からは少し乱れた熱い呼吸が漏れていた。

『伊尾、さん……』

 かすれた声で名前を呼ばれ、激しく欲情を煽られる。

 このまま抱きしめてキスをしたい。
 そんな衝動を必死でこらえた。

『そんな顔で抱き着かれたら、さすがに理性がもたないな』

 そうつぶやき、佐原の頭を抱き込む。

 彼女の頭に顎をのせながら、自分の理性の限界が近いことも感じていた。

 恋愛も結婚もしないと思っていたはずなのに、真面目で危なっかしいこの後輩が、愛おしくてしかたなかった。


 たぶん、はじめて会ったときから、俺は佐原に惹かれていたんだと思う。




 翌日の月曜。

 合同庁舎の中にある麻薬取締事務所に行くと、眉を八の字にした東海林さんが近づいてきた。

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