黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「ちょっと、伊尾」
「東海林さん、おはようございます」

 俺が挨拶すると、そんなのはいい、といように顔の前で手をひらひらさせる。

「美緒ちゃんがまだ来てないのよ」
「佐原が?」

 それを聞いて、俺は佐原のデスクに視線を向けた。
 たしかに、彼女が出勤している気配はない。

「いつも一番に来て、みんなにおいしいお茶をいれてくれるのに、おかしいわよね」

 東海林さんは太い腕を組みながら、首をかしげる。

「ね、伊尾がいつも冷たくするから、美緒ちゃん傷ついてこないんじゃないの?」

 そんなのは完全な言いがかりだ。
 俺は東海林さんを無視してため息をつく。
 
 昨日、偶然佐原に会った。
 あのとき佐原は、俺と梨花さんが一緒にいるのを少し離れた場所から見ていた。
 
 もしかして、俺たちの関係を誤解したのかもしれない。
 
 だから、傷ついて仕事をさぼった?

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