黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 そう考えてすぐに打ち消す。
 
 真面目でまっすぐな佐原は、そんなくだらない理由で仕事を休む奴じゃない。

「もしかしたら、体調不良かもしれない。佐原に電話してみます」
 
 すぐにスマホに電話をしてみたが、電源が入っておらず繋がらなかった。
 
 心配する必要はない。
 きっと寝坊でもして、いつもより少し出勤の時間が遅くなっただけだろう。
 スマホも、充電を忘れて電源が落ちるなんてよくあることだ。
 
 そう思う反面、じわりと不安と焦りが込み上げてくる。
 
 すると、藍川が声をかけてきた。

「伊尾。前に話していた男の調査報告、聞く?」
「なにかわかったか?」

 俺が顔を上げすぐにうなずくと、藍川がタブレットを持ち近づいてきた。

「伊尾が調べてくれって頼んできた呉林って男、今は日本名を名乗っているけど、もともとは中国人だね」
「中国人?」

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