黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 俺が聞き返すと、藍川はタブレットに表示された彼の情報を見せる。

「そう。中国国籍の香港居民」
「香港……」
「それから、この前潜入捜査した会員制のクラブもその前に売人を逮捕したクラブも、書類では別の人間のものだけど、実質上のオーナーはこいつらしいよ」

 その報告に、いやな予感が強くなる。

 俺たちが潜入捜査した日に、偶然あいつはクラブにいた。
 もしかしたら、協力者に嘘の情報を流して、俺たち麻薬取締官を店におびき寄せた?
 
 そうだとしたら、あいつの狙いは、マトリ側の情報を得ることだ。
 そして、一番狙われる可能性が高いのは……。

 そこまで考えて、俺は上着を掴んだ。

「伊尾?」
「悪い、藍川。この呉林って男の自宅や交友関係をもう少し詳しく調べてくれ。俺は今から佐原の家に様子を見に行ってくる」

 俺の低い声に状況を察して、藍川は表情を引き締める。

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