黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「美緒ちゃんなにかあったのか?」
「まだなんとも言えないけどな」

 藍川に短く答えて視線を東海林さんに向ける。

「東海林さん。念のため、いつでも出動できるように準備しておいてください」
「わかったわ」

 彼が頷くのを確認すると、俺はすぐに事務所を出た。





    
 ただの杞憂であってほしい。
 きっとただの寝坊だ。
 血相を変えて駆け付けた俺を、寝ぼけた彼女が見て、『伊尾さん、心配しすぎですよ』とあきれて笑うに決まってる。
 
 焦る気持ちを抑えるように、そう願いながら公用車を運転する。
 
 佐原が住んでいるのは、単身者用の公務員宿舎だ。
 建物の前に車を乗り付け中に入る。
 
 エレベーターを待つ気にもなれず、階段を一気に駆け上がり彼女の住む部屋のインターフォンを押した。
 
 一度押して乱れた呼吸を整えながらしばらく待つ。
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