黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 続けて二度、三度と押したけれど、まったく反応はなかった。
 
 諦めきれず、今度は扉を手でたたく。

「佐原、いないのか?」

 室内に向かって声をかけたけれど、中に人の気配はなかった。

 俺は冷たい扉に手を付き、はぁっと息を吐きだす。
 そのとき、隣の部屋の扉がわずかに開いた。
 
 中から女性がこちらを見ていた。

「あの、どうかしたんですか?」

 俺の物音や声に気付いて、様子を見に出てきたようだ。

「さわがしくしてすみません。佐原がなんの連絡もなく出勤してこなかったので、念のため様子を見に来たんです」

 俺の説明に、女性は「そうですか」とつぶやいた。

「佐原さん。たぶん、きのうから家に帰ってないと思いますよ。ベランダに洗濯物が一晩中干しっぱなしで、どうしたんだろうなって思っていたんです」

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