黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「試薬の色が青に変わりました。これはこの白色結晶が覚せい剤だという証拠です」

 試験管の色を確認してもらおうと私が近づくと、売人の男が突然立ち上がった。

「ふざけんな!」

 怒号のような叫び声を上げながら、こぶしを握りしめ、振りかぶる。
 
 
 ……殴られる。
 
 
 とっさに両手で顔をかばおうとしたけれど、手に試験管を持っているのを思い出し、反応が遅れた。
 
 ガン!という鈍い音と、脳が揺れる感覚。
 
 衝撃を受け止めきれず、体が後ろに飛んだ。
 
 VIPルームの中央には立派なガラスのテーブルがある。
 もしそこに頭を打ち付けたら、軽いけがではすまない。

 私がぎゅっと目をつぶり身を固くすると、力強い腕に抱きとめられた。

「なにやったんだ、バカ」

 容赦ない罵倒に目を開く。
 私を受け止め眉をひそめるのは、伊尾さんだった。

「大丈夫か?」

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