黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 きのうから帰っていないとしたら、俺と会った後、佐原はどこにいってしまったんだろう。

「ありがとうございます」

 隣人にお礼を言って、宿舎を出る。

 公用車の運転席に座り、必死に頭を働かせ考える。

 佐原は今どうしているんだろう。もしかして、呉林に連れ去られたんじゃ……。

 脳裏に浮かぶのは、クラブで出会った呉林の顔。

 あいつは俺に敵意を向けていた。あれは佐原に好意を持っているからかと思ったけれど、恋愛感情ではなく麻薬取締官への警戒だともっと早く気付けていたら……。

 ふがいない自分にいら立ち、奥歯を食いしばる。

 きのう、俺に背を向けて歩いて行く佐原を追いかけて捕まえていれば、こんな事態にはならなかったのに。
 
 焦りと怒りが込み上げてきて、こぶしを乱暴にハンドルに叩きつけた。
 
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