黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「麻薬取締官の名前や顔や捜査情報を、教えてくれるだけでいい。それだけで僕の商売は格段にやりやすくなるし、ヤクザや海外の麻薬組織との取引材料にもなる」

 悠々とした態度で私を見下ろす呉林くんに、怒りで胸の奥が熱くなる。

「そんなの、教えるわけがないでしょ?」

 どれだけお金を積まれても、どんな痛い目にあわされても、犯罪者に協力するなんてありえない。

「残念だなぁ。じゃあ、むりやり言うことを聞くようにするしかないね」
「むりやりって……」
「クスリ漬けにしてあげるよ。そうすれば、すぐに君も『情報を差し出すからクスリをください』って俺にすりよって、おねだりするようになる」

 やわらかな笑顔を浮かべる呉林くんの瞳は、底が見えないような黒い色をしていた。

 ぞくりと背筋が凍り付く。
 
 どうにかして逃げ出さなきゃ。
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