黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さんは、私の目の焦点を確認するように顔をのぞきこむ。
 私が首を縦に振るのを確認すると、彼はするどい視線を私から男に向けた。

 私を殴った売人の男は、声を上げ押収された薬を取り返そうと暴れていた。

 伊尾さんはそれを見て、小さく舌打ちをしながら立ち上がる。

 正面から躊躇なく近づいてくる伊尾さんに、男は意味不明な言葉を叫びながら殴り掛かった。
 
 けれど伊尾さんは殴られる寸前ですっと身を引き、ギリギリで男のこぶしをかわす。

 体重をこめたパンチをよけられ男はバランスを崩す。

 そのすきに伊尾さんは素早く男の背後に回り腕を取ると、あっという間に床にねじ伏せ自由を奪った。

「無駄な抵抗はするな」
「うるせぇ! 離せ!」
「ここでお前が罪を認めなかったとしても、すぐに自宅に捜査が入る。もう、逃げ道はない」

 低い声で言われ、もうなにをしても無駄だと悟ったんだろう。
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