黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 男はようやく抵抗をやめ、力なくうなだれる。

「二十三時四十五分。覚せい剤譲渡の現行犯で逮捕する」

 伊尾さんはそう言うと、男の手首に手錠をはめた。




  

「無事密売現場を押さえられてよかったわねぇ。美緒ちゃんお疲れさま」


 大きな手で私の肩を叩きながら労ってくれるのは、先輩の東海林さんだ。
 
 四十歳の彼は、坊主頭に強面の顔、百九十センチ近くある筋骨隆々の巨体という一見怖そうな風貌だけど、女性のような柔らかな口調で話すとても優しい人だ。

「お疲れさまでした」と頭を下げると、東海林さんの分厚い手のひらが私の頭をぐりぐりとなでた。

「それにしても、かわいい美緒ちゃんの顔を殴るなんてほんとひどいやつよね。取り調べで思いっきりいじめてやらなきゃ」
 
 東海林さんが私の顔を見ながらぷりぷりと怒る。
 
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