黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「いいから、銃を捨てて手を上げて」

 本当は緊張で声が震えそうだった。
 けれど、その動揺を悟られないように、必死にお腹から声を出す。

「真面目で心優しい佐原さんに、僕が撃てるわけないよ。もし君がその銃で僕を殺したら、お人好しな君は一生後悔して罪の意識を背負うはめになるよ」
「そんなこと……」
「実際、君のせいで友人が大学を辞めて、罪悪感を持っているだろ?」

 そう言われ、銃を持つ手が震えた。

「あの子、菊田さんだっけ? きっと今でも彼女は佐原さんを恨んでいるだろうね。君がマトリに通報したせいで、あの子の人生はめちゃくちゃになったんだから、恨まれて当然だけど」

 突然静香の名前を出され、ぐっとのどがつまった。
 
 大学生のとき、彼女は覚せい剤を使用した。
 どうして彼女がクスリを使い始めたのか、不思議だったけど……。

「もしかして」

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