黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 鏡を見ていないから確認できないけれど、殴られたせいで私の頬は赤くなっているんだろう。
 
 少し切れたようで、口の中は血の味がする。
 この感じだと二、三日は物を食べるのが大変かもしれない。
 
 そう考えていると、背後から低い声が聞こえてきた。

「犯人の前で油断した佐原が悪い。自業自得だ」

 振り返ると、伊尾さんが厳しい表情でこちらを見ていた。

「相変わらず伊尾は美緒ちゃんに冷たいんだから! 女の子が顔を殴られたのよ? ちょっとは心配してあげなさいよ」

 東海林さんは私を分厚い胸の中に抱きしめ、頭をなでなでしながら伊尾さんを睨む。

「東海林さん。そうやって佐原を甘やかさないでください」
「あら、そんな澄ました態度をとって。伊尾はあたしがうらやましいんでしょう?」
「うらやましいって、どういう意味ですか?」

 伊尾さんはいぶかし気にたずねる。
 
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